普通科の高校に通っていた頃、座学中心ではなく体を動かしながら学びを得ることに関心を持ちはじめ、農学部のある大学へ進学しました。そこでの教育実習で行ったのが、地元の農林高校です。2週間という短い期間でしたが、こちらが必死で伝えようとすることに応えてくれ、高校時代にはなかった活発なコミュニケーションが刺激となり教員を志すことに。そもそも農業はとても分野が幅広く、どの分野に関しても確実な技術と知識をもって指導することが農業教員には欠かせません。特に実習を通した学びでは、自分が体現しながら伝える部分が多くあります。それを見て得た技術が、これから農業を担う生徒たちの基礎となることを考えると、とてもやりがいを感じますね。
農業教員とは、作物や生き物を相手にした学びのなかで、その扱い方や関わりの難しさなどを最初に教えてあげられる存在です。天候や流行性の病気、作物の場合だと害虫問題など、毎年環境は同じではありません。自然という大きな動きのなかで、生徒には一部分しか経験させてあげられないもどかしさはありますが、その都度、変化に対応しながら予測をたて、時間とも闘いながらいかに学びを深められるか考えています。生徒への対応も似たところがありますね。さまざまな生徒がいるなかで、同じようなやり方や接し方ではなく、一人ひとりに合った伝え方や言葉の選択を意識。常に相手の反応や表情を見ながら、きめ細かに対応できるよう心がけています。
授業では補えない実践的なことを教わるため、学校では地域の生産者の方から直接話を聞く機会が設けられていて、僕は今、益田市のブドウ生産者の方々にお世話になっています。講習会を開き知識を伝授してもらうことはもちろんですが、地元の子どもたちに少しでも益田市の農業の発展や後継者問題の解決につながる意識付けになればと。実際に今年、ブドウ農家に就職する子もいて、教員になってますます地元貢献への想いは強まりました。生産者の生の声は影響が大きく、感銘することが多いんです。生徒たちもまた、僕がふだん何げなく言った言葉に感動してくれることがあり、その子たちの人生に関われているなと思えることが、とても嬉しいですね。