僕が教員になった理由には、父の影響が大きくあります。父は同じ出雲農林高校で教員として働いていました。僕が入学し、生徒として接する父は厳しかったのですが、家での父は印象がまったく違います。いつも楽しそうに学校での出来事を話し、授業はもちろん部活にも真剣に向き合い、疲れたという言葉をほぼ聞いたことがありません。「すごくいい仕事」父から感じる教員像は、そのひと言につきました。そんな環境で育ったこともあり、自然と教員の道を選んだのはもちろん、高校で学び知った農業の魅力にはまったことも理由に。次は自分の力で、この素晴らしさを生徒たちに伝えていきたいという想いが強くなり、今にいたっています。
農業教育の大きな特長は、座学だけでなく実習があるところ。教室で行う授業だけでなく、畑や圃場に行き、実体験を通して学ぶことがたくさんあります。私はいま校内で果樹を担当しているので、シャインマスカットやデラウェアを栽培しながら、みかんやゆずなどの柑橘類も育てています。栽培だけでなく、教育活動には「販売」もあり、生徒は自ら育てた果樹(ブドウ等)を教員や生徒、保護者を対象に校内で販売。まさに生産から流通までを学んでいます。教科書に載っていることが全てではない上、うまくいかないことの方が多い農業だからこそ、変化する情報に対応する柔軟さ、地域に根ざしていく大切さなど、生徒が日々成長し、達成していく姿はとても誇らしく思えます。
島根は農業がやりやすい場所であり、培ってきた地域との深い関わりがあります。出雲農林高校は特に、一般開放している「ふれあい動物園」をはじめ、地元の方々とのつながりを大切にしてきた学校。私自身、ここで得た経験があるからこそ、いま教員を楽しめているように、これから教員を目指す人には、自分が楽しかったと感じていた学生時代を思い出し、それを次の世代へとつなげてもらいたいと思っています。夢や希望を持って入学してくる生徒たちには、できることを積み重る喜びを教えてあげられるように。私もまた、サポートしながらそれを分かち合い、大きなやりがいのなかで、30年経っても、ここで生徒たちと一緒に活動していけたらと思い描いています。